作品の返却を経て、ドバイで見聞したことがやっと一つの経験として自分のなかで落ち着きはじめています。
異文化に触れることで、カルチャーショックを受けるのは必要なことだと思いますが、人形を玩具以上の意味を含んだ鑑賞物として見るのは初めて、という世界の人々の目にさらされて、自分が据えていた価値観をあえて問い直される気がしました。
人形作家作品の価値を意識して100年の歴史がある日本や欧米と、それがなかった中東やアジア各国の人々の意識のギャップを、今すぐそこで埋めるなんてことは到底無理です。しかし、そのギャップをものともせず、人の心に届く人形もあるでしょう。見る側の個々の状況や性格も深く関係してくるはずですが、そういうものがあるとすればどういうものなのか、考えるようになりました。
ドバイでは珍しいからか、日本のように「人形がこわい」という人はなく、皆「これはなんだろう」と、老若男女、家族連れも若いカップルも、それは一生懸命人形を見ていました。この「熱心さ」は、日本の人形展では見られない光景でした。
主催者によれば大好評を博した結果らしいですが、その後、人形をみた人の心には何が残っているのでしょうか。この人形展のことをどういうふうに思い出すのか、興味深いところです。