銀座のスパンアートギャラリーで、土井典さんが3年ぶりの個展「不確実な少女達」を開催しています。2004年の東京都現代美術館での「球体関節人形展」に出品した作品もありました。私は「音楽会に」と題された赤い髪の作品が好きです。3〜4等身にデフォルメされた山積み状態の少女達も面白いと思いました。
種村季弘、寺山修司や渋澤龍彦ら、錚々たる顔ぶれの原稿の展示もありました。土井さんは土方巽や寺山修司ら70年代の舞台美術に重要な貢献をし、四谷シモン氏のように当時のアングラ文化の中心となった文化人に支持された美術家ですが、その作品は日本の美術館に収蔵されていない現実があります。
国家予算で公立美術館に購入された人形作品を私の記憶の範囲で思い起こしただけでも、土井さんの人形作品がそこに加わっていないことは、きわめて不自然と思えます。
国家予算で購入された作品には、それなりの購入理由や根拠があったと思いますが、逆に考えれば、土井さんの作品が購入されていない現実に対する理由もあって然るべきです。
それは何でしょうか。もしくはもし、購入候補にも上っていない現実があるのだとしたら、それはそういう分野を対象とする美術館の研究の怠慢だと思います。
日本が西洋美術の概念を輸入してからの日本人の人形文化を直視し、その足跡を記録することで日本人のアイデンティティを浮上させることができます。そういう仕事にこそ、公の予算を担った機関は従事して頂きたいものだと思います。