今、取り組んでいる企画は「世界創作人形展」として、世界を謳っています。では世界の創作人形とは?
たぶん、創作人形に関する世界的統計はありません。でも確かにいえることは、創作人形は経済的に余裕のある国にしか成立しないということです。私の知る限り、欧米とオーストラリア、アジアは日本とその周辺程度、日本の影響をうけた韓国、台湾くらいでしょう。他国に比べ断然作家数の多い日本においてさえ、その規模はたかが知れています。すなわち、日本はとても平和で裕福で、かつアニミズムの精神文化が損なわれなかったからこそ、創作人形が盛んでいられるのです。その恩恵にあずかった幸運、自分たちの豊かな環境を認識できている作り手は、少ないのではないでしょうか。
アジアやアフリカ、中南米でも、土産物の需要と供給があるところにはちょっと作家性のある人形を見つけることもできることもあるかもしれませんが、個人が作家としての名において継続的に活動する基盤は整っていないでしょう。それでも観光産業がある場所はまだ恵まれています。観光産業も成り立たないような大変な国や地域は、まだいくらでもあります。ほとんどの国の人たちが、創作人形を作ったり愛でたりする余裕なんてないし、そういうものがあること自体考えもつかないのです。
そういう「世界的」な視点にたてば、創作人形に関わっていられるということは、とても恵まれていることなのだと思わざるを得ません。