2008年11月29日土曜日

世界の創作人形の現状3

欧米の作家の意識を知ることは、日本の作家にとっても参考になると思います。
簡単に考えると、日本では男性が社会に対して人形作家を名乗るには、先入観のことを除いても、仕事として構えるのにある程度の覚悟が必要だと思います。国内のプロの人形作家と名乗る人は圧倒的に女性が多いと思いますが、では、どれくらいの女性作家がそれほどの意識でいるでしょうか。すなわち、どれだけビジネスとして考えているか、ということです。
私はジェンダーでものごとは語りたくありませんが、日本はまだそのギャップは認めざるを得ません。(これについては長くなるので別の機会でもあれば、そのときに。)
欧米の作家の場合は、作家と名乗る以上、男女の隔たりなくプロとしてビジネス感覚を持ち合わせています。主な収入源は作品の売上なので、作品発表でコスト回収できるかどうかという問題にはとてもシビアです。それは地理的な問題と社会環境の違いから、日本のように教室経営が成立しにくいこともあります。各地で講習を単発で集中的に開催することはありますが、日本の人形教室のように長い時間をかけて通うことが前提で、ある程度の定期収入を望める作家は珍しいといっていいでしょう。
そのような事情もあって、90年代後半あたりから市場が冷え込んで以来、市場参入してくる新人の作り手は、欧米ではあまり見られなくなりました。それどころか、市場から撤退したり活動を休止するベテラン作家もいます。ニアダの会長を務めたことのあるアメリカのアキラ・ブラントも今回の企画に声をかけたのですが、活動を休止しているとのこと。彼女の作品は私もとても好きでしたので、残念な話でした。その反面、ロシアでは体制崩壊と好景気の追い風を受けて市場や人形教室が盛んとなり、新人作家が輩出するようになっています。ロシアの新世代の作家たちが市場の試練を経てどう育って行くのか、関心をもって見ていきたいと思っています。